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大阪地方裁判所 昭和45年(ワ)1345号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕第二、損害

(一) 休業損害

1 <証拠>によれば、原告は、本件事故当時城東製パン株式会社の取締役営業部長として、月額金二〇〇、〇〇〇円の役員報酬を得ていたが、本件事故により欠勤したため、その間は報酬が月額金一〇〇、〇〇〇円に減額されたこと、但し原告の生計を維持するため、従前どおり勤務先より月額金二〇〇、〇〇〇円の支払いを受け、減額分を加害者より損害の填補を受けた際、勤務先に返還することになつていること、の事実が認められ、<証拠判断略>。

2 また、前掲証拠によれば、原告は本件事故による受傷のため昭和四二年一二月より昭和四三年一一月まで一二ケ月間欠勤した事実が認められる。ところで、原告の受けた傷害は前示第一認定のとおり外傷性頸椎症即ちいわゆるむちうち症であり、その症状は前掲甲第二、第三、第八号証によつても明らかな如く頭痛、後頭部痛、項部痛等であつて、主たるものは自覚的な神経症状であり、なお原告の場合には頸椎の運動痛、運動制限があることや第二ないし第四頸椎両側項筋に圧痛のあることが認められるけれども、これとても極めて軽度なもので、本人の訴えによるものが主となつていることが容易に推認される。しかして、このような病状の場合、果して本件原告の如く一六七日に亘つて入院する必要があつたかどうか、一年間もの欠勤を要したものであつたかどうか、更には二年余に亘る治療が必要であつたかどうかについてはいささか疑問なしとしない。一般に現在の医学ではむちうち症に対する的確な診断と治療方法が十分に確立していない現状にあり、患者の性格や生活環境によつて病状の訴え方にかなりの差があるのに患者の訴えのみによつて病状の診断がなされ、安易に治療が加えられる事例がなしといない。そのためか、同じような頸椎の過屈伸過屈曲運動によつていわゆるむちうち症に罹患して何らかの自覚的な神経症状がある場合にも、これを極めて過大に訴えて長期間の治療と休業をなす者と、かかる症状をほとんど無視して短期間の治療と休業によつて済ます者とがいることが、日常多々経験するところである。このようなことからすれば、何らかの自覚的な神経症状のある場合に長期間の治療を受け休業をなすこと自体は被害者(当該患者)の自由ではあるが、それによつて生じた損害を全て損害賠償として加害者側に負担させることは加害者側に酷であり、公平の見地からも許容しがたいものといわざるを得ない。そして、通常のむちうち症の場合、長くとも六ケ月間程度の治療と安静によつて軽快する事例の多いことが経験則上明らかであるところ、原告の本件追突事故による傷害も外傷性頸椎症(むちうち症)であり通常のむちうち症と変らないことは前記のとおりであるから、原告の本件事故による治療期間、休業期間を六ケ月の範囲内においてこれを相当な期間と認め、その間の損害のみを被告に賠償させることとし、その余は本件事故と相当因果関係がないものとして認容しないこととする。

3 以上により原告の休業による損害を算定すれば、金六〇〇、〇〇〇円となる。

一〇〇、〇〇〇×六=六〇〇、〇〇〇

なお、原告は昭和四三年度の得べかりし賞与金四八〇、〇〇〇円を取得しえなかつたと主張するが、原告本人尋問の結果によれば、同年度は勤務先会社において欠損が生じ(右の欠損と原告の欠勤とに因果関係ありと認めるに足りない)、株主に利益配当もできず、ために役員報酬(賞与)の支給を得られなかつたものと認められるので、右主張の賞与額を認容することはできない。

(二) 慰藉料

前記各認定の原告の本件事故による傷害の部位、程度、後遺症の内容、程度、右(一)の2の範囲内における治療期間、その他本件に顕れた一切の事情を考慮して、慰藉料を金七〇〇、〇〇〇円とするを相当と認める。 (吉崎直弥)

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